赤壁の予習

いよいよ今日,11月1日,映画Red Cliffが封切りとなる。といってもこれは日本での話しで,オーストラリアではどうかというと,先日調べてみたところ,どうやら年が変わって来年1月29日になるようである。この映画,前々から,もうすぐ公開になるということは知っていたのだが,2週間ほど前にひょんなことから,間近に迫っていたことを知った。公式Webサイトも完備されており,「タイタニック」を凌ぐ人気になるという前評判である。実際私にとってはタイタニックという映画はどうでもいい部類に入るものなので,比べること自体馬鹿馬鹿しいと思っている。

どうしても,映画館で見て見たい映画の一つである。そういう映画だけに,今回は是非ともその前にしっかりと予習をしてから見に行きたいと思っている。

というわけで,先週から吉川英治の三国志(文庫本全8巻)を読み直している。大学生のときに初めて読んでから,いままで通算で軽く5-6回は読んでいて,前回は5年前ぐらいではなかったか?まあ,まだ時間があるので,まず大丈夫だが,少なくとも,この映画の題材である「赤壁の戦い」までは読んでおかないと,と思っている。これは第5巻あたりに相当する。

吉川三国志は,前半は劉備玄徳,後半は諸葛亮孔明が主人公と考えて差し支えない。ただ,どこかでスイッチが切り替わるように主人公が替わるのではなく,冒頭は劉備が登場し,やがて孔明が登場し,物語の重心が行ったり来たりしながらも,次第に孔明に移っていく。もちろん全巻を通して,それ以外の綺羅星のごとき武将の挿話が入る。特に劉備,孔明の宿敵,曹操は一方の英雄であり,実際に全巻を通して影の主役である。

そして,この赤壁のころには,ほぼ重心が孔明にかかっている。したがって,吉川三国志における赤壁の戦いでは,孔明が大活躍する。

映画,レッドクリフではどうかというと,どうやらスポットライトは呉の将軍,周瑜にもっと明るくあたっているようである。

吉川三国志では,周瑜は実力と知略に富んだ英雄ではあったが,それを遥かに上回る孔明に出会い,心服しつつも,いつも疑いと嫉妬の視線で孔明に接している。最後は出し抜かれて,取ろうと思っていた領土をすべて孔明に先取りされ,地団駄を踏むこととなる。どちらかというと,孔明の引き立て役といっていいだろう。

しかし映画では,配役で見る限りでは,孔明も主役の一人には違いないが,むしろ周瑜に重心が寄っているように思える。だから,今回は,すこし周瑜を贔屓目でみながら読み進んでいこうかと思っている。

さて,ここで,もうひとつおさらいしておくべきことに気付いた。

こちらの劇場でやる外国映画には,当然ながら英語の字幕がつく。耳よりは読んだ方が理解できる場合が多く,私にとっては,字幕付の外国映画の方が,英語の字幕なし映画よりも気が楽である。
ところが,中国語の場合は一つ問題がでてくる。

名前のことだ。中国の地名,人名といったもの,特に三国志に出てくるような名前はすべて漢字で覚え,日本語の読みを当てて覚えている。これが,英語字幕では,当然ながら英語バージョンの中国語になる。この英語バージョンの発音は,もちろん現代の中国語,それも普通語もしくは北京語が元になっており,日本語読みとはかなり発音が異なる。有名なところでは,毛沢東は英語バージョンではMao Zhedon,とか,Mao Tse-tung。これをカタカナで書けば「マオツェトン」あたりになるか。これが,知らない名前だったら,いきなり見ても,一体何の話をしているのか,皆目見当がつかない。

もちろん,呼び合っている人々を見て,ああ,これがAという人で相手がBだという推測はできるし,これは何も中国語劇に限らない。

しかし,中国の歴史を扱い,すでに知っている有名な故事を題材にしているだけに,ぱっと見て何のことだか分らないと,面白さも台無しになりかねない。

そこで,いくつか,基本を押さえておきたいと思い,昨日いろいろ調べてみた。
本当はピンイン表記という,イントネーション記号付だといいのだが,ここではそれは省略する。

まず,国の名前だ。

三国志の時代は後漢末。この「漢字」とか「漢民族」の「漢」は,英語だと,Hanとなる。

三国志の三国にいくと,まず,魏は不明,誰か教えてください。
蜀はXu,呉はWuである。ただ,この映画では呉のことを東呉と呼んでいるらしく,East Wu という訳が付くようである。

人名については,主要登場人物についてざっと調べてみた。英語表記と大体の日本語読みを示す。

蜀:Xu 「シュ」

劉備:Liu Bei 「リウベイ」
関羽:Guan Yu 「グァンユ」
張飛:Zheng Fei 「シェン フェイ」
諸葛亮:Zhuge Liang 「シューゲ リヤン」
趙雲:Zao Yun 「ザオ ユン」

曹操:Cao Cao (Cはほぼts音らしい。従って「ツァオツァオ」。二つのCaoは実際にはイントネーションが異なる)

呉:(East) Wu 「ウー」

孫権:Sun Quan 「スン キュアン」
周瑜:Zhou Yu 「シォウ ユ」
小喬:Xiao Qiao「シャオ キァオ」
孫尚香:Sun Shang Xiang 「スン シャン シァン」 (ShangとXiangでは本当は発音が全然違うはず)

とまあ,こんなところか。残念ながら,姓と諱(いみな)だけで,字(あざな)が分らない。

ただ,氏名と字を字幕で使い分けると,却って混乱するだろうから,おそらく映画を見るにあたっては,字の方は知らなくても大丈夫だろうとは思う。

ここで中国語に明るい人にお願いです。
上記の日本語読みについてチェックして,誤りがあったらご指摘ください。
あと「魏」はなんと読めばいいか教えてください。
そして最後に,以下の字の読みを教えてください。

玄徳
雲長
翼徳
孔明
子龍

今回,日本の公式サイトをみていて笑ってしまったのが,この名前。
かっこつけてローマ字でShu Yuなどと大書しているのだが,これにどんな意味があるのだろう。

劇中の発音とは程遠いし,仮に英語字幕が出たとしても,これらとは全く違う。
かっこつけだとするなら,いい加減,アルファベットに対するコンプレックスを捨てたらどうか?

私がこのサイトを作ったら,まずは,有名な書家(それもできれば中国人)に筆で名前を書いてもらい,アルファベットの代りにこのイメージを採用する。

この壮大な物語が,いつの時代に起きたことなのかに思い至れば,そういう発想になるはずだ。

ちなみに,卑弥呼が使節を魏に送ったのは赤壁の戦いから30年後,その朝貢を受けた魏帝は曹操の孫になる。

今年は赤壁の戦いからちょうど1800年なのだそうだ。

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