手塚治虫トリロジー (1)

トリロジーとか, 大げさな題名にしたが, 3部作というだけのことで, 内容は大したものではない。

虫プロのロゴ
虫プロのロゴ

東京に居る。

西武池袋線, 練馬高野台駅とその池袋寄りの隣の駅, 富士見台駅の間, どちらかといえば練馬高野台から近い位置にあるマンションに転がり込んでいる。練馬高野台駅までは徒歩8分。富士見台駅までは15分近くかかる。

練馬高野台から富士見台まで, 線路に沿う道が線路両側に通っている。練馬高野台から環八までは北側の道が両側に歩道も整っていていい道であるが, 環八から富士見台までは南側の道が広いし, 店もたくさん並んでいる。こちらが昔からある道と推察できる。

練馬高野台は私が子供の頃はなかった, 比較的新しい駅である。したがって駅前ロータリー周辺にはスーパーもあるが, その他の店の数は富士見台駅周辺に比べればずっと少ない。

富士見台は古い街であり, 商店街が発達している。富士見台銀座などという似非銀座通りまである。

そして, 富士見台駅から練馬高野台に向かって線路の両側に商店街があるが, やがて線路北側は商店が途絶え, 南側の商店街のみがさらに西へと伸びている。

店並は昭和がそのままのような風情である。やがてこの店並も途絶えてくるが, もうあと数軒で終わろうかというところで, 左, つまり南向きに小道を入る。小さな八百屋のところで曲がるとすぐに行き止まりかと思うが, どんつきまで行ってみるとそれはT字路になっていて, これを右に。この道がすぐに左に曲がり, 再びT字路。また右, すぐに左。これをもう一回繰り返す。商店街から横道にそれて5分近くかかるだろうか? すると, 左側に虫プロの建物が見えてくる。

虫プロ
虫プロ

全く普通の民家のようであるし, 実際中身もただの民家とあまり変わらないと思われるが, とにかくこれが虫プロである。ただの民家との違いといえば, 少々周りより大きな家ということと, 虫プロのロゴが玄関の右上と建物の屋根に近い壁に張り付いていることである。

いまどきGoogle Mapで調べれば, あっという間に場所が特定できるのだが, まさかこんなに狭い小路が複雑に絡み合う住宅街にポツンと存在するとは思わなかった。

訪れたのは雨が降りそうな天気の夕方で, 黄昏直前の時刻。寂しい印象を受けた。

「ここがかつて手塚治虫が漫画, アニメを作り出していたところだ」と思い込んでいたが, これは正確ではない。Wikipediaで調べると, いろいろ知らなかったことが多いことに気づく。

手塚治虫が虫プロダクションを立ち上げたのは1961年。鉄腕アトムは私の一番古い記憶のひとつであるが, 夢中になって見ていたあのテレビ漫画はこの虫プロの産物であった。

そのほか, ワンダースリー, ジャングル大帝, リボンの騎士などが有名どころ。

意外だったのは, 虫プロが世に出したアニメは手塚作品とは限らない。たとえば「国松さまのお通りだい」とか, 「あしたのジョー」はなんと虫プロが制作している。

この時点の虫プロは「株式会社虫プロダクション」通称「旧虫プロ」と呼ばれるもので, やがて経営難となり, 1973年, 倒産している。

この旧虫プロがどこにあったのかは不明である。Wikipediaに1963年ごろの写真があるが, この建物のようでもありちがうようでもある。 とにかく, 手塚治虫が虫プロを立ち上げる前から富士見台に住んでいたことは事実のようで, この周辺であったことは間違いないし, ひょっとしてこの建物はそのときに建てられたままなのかも知れない。

そして1977年に新たに「虫プロダクション株式会社」として新会社が設立され, これが現在までこの場所で活動しているのである。ただしその母体は旧会社の労働組合で, そこに日本ヘラルド, 日活などが株主となって資本参加している。資本的には旧会社とは全くの別物だとのことだ。

富士見台商店街は前述したとおり, 昭和を色濃く遺している。ここにベレー帽を被った手塚治虫が現れてもなんの違和感もない。

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