今日は,某日本人の集まりがあった。場所はチャイナタウンの中華料理屋。
出席者にお医者さんが一名。オーストラリア医療事情裏話などが出て,興味深かった。
そこで出た話のひとつ。
彼がある病院に勤務していたころのこと。ガン患者を多く見るところで,そういうところに勤めていると,考え方がだんだん刹那的になっていくのだそうだ。
言われてみれば納得である。ガン患者というのは,なにもお年寄りとは限らない。中にはまだ20代前半。あるいは幼児だっているわけだ。
人間,どこで,どう転ぶか分からない。ある日突然,思わぬ所で,思いもかけない人生の終末を迎えてしまう人もいるのだ。
そういう人たちを看ていると,自分もいつこうなっても不思議じゃないと思えるのだろう。
素人の我々は,そういう話を聞くと,どうすれば,ガンにならずに済むのか,少しでもヒントを得たいということになり,いろいろと質問した。
いろいろ出た話。質問の答えなどをまとめると,
日本人の胃ガンは風土病のようなもの。やはり食生活が関係している。
ハワイ在住の日系人を調べると,第一世代では胃ガンが多いのに,二世,三世となるにつれ,胃ガンの確率は減り,欧米型の大腸ガンが多くなる。
胃ガンは,オーストラリアでは全く注目されていない。検査もしない。しかし,胃ガンは手遅れになるとまず助からない。肝臓に転移したらもうだめだろう。
ところが大腸ガンはたとえ肝臓に転移しても,その部分をとってしまえば,生きながらえる確率が高い。
オーストラリアは紫外線が強く。皮膚ガンが多い。しかし,致死率という観点で見ると,北半球の皮膚ガンの方がずっと致死率が高い。
どうも皮膚ガンには北半球型と南半球型の二つがあるようだ。
乳がんはヒステリックな女性ほどなりやすいようだ。
ストレスはガンの一因になるのは確かだろう。
などなど,いろいろとガンの引き金になるものが,話題になった。まあこれは目新しいことではない。
しかし,それぞれの原因が話題になるたびに,最終的に彼はこういうのだ。
「確かにそれは原因であると思われるが,それがすべてではない。」
たとえば,バストが大きい女性もやはり,乳がんになりやすいという。
確かに経験的にそれは正しいようにも思えるが,バストが大きいと,発見しにくくなり,その分手術に至る症例が増えてしまう。
その結果として,バストと乳がんの発生率の因果関係が言われるのかもしれない。
とにかく,「これをこうすればこのガンにならない」などという,決定打はどこにもない。
また,治療法についても,昔は安全サイドを取って,たとえば乳ガンだったら,わきの下付近のリンパ節まで取り除いていた。
ところが,そこまでやらなかった症例と予後を比べてみると,あまり差がない。
だったら,リンパ節の切除は不要と言い切れるかというと,それはそれで不安である。
なぜなら,そうやって比較した症例は,それぞれがみんな違う症例なのであり,ベストの解がどれだということは言い切れない。
でも,そうは言っても,ある程度の判断基準は確立しないとならない。
ということで,やはり人間相手のお仕事は,コンピューターのように簡単じゃないな。という率直な感想。
そして,彼の結論はこうである。
したがって,乳がんを切っても,だめな人はだめ。切らなくても助かる人は助かる。
乳がんにもいろいろあって,ケースバイケースである。これはすべてのガンにあてはまる。対処法はすべてケースバイケースなのだ。
そして,さっきの「これをこうすればこのガンにならない」などという,決定打はどこにもないということと考え併せると,
要するに,ガンはなってから考えるしかない。
ということに尽きるのだそうだ。
であるなら,なってもいないガンを今から心配しても始まらない。
そんなことより,毎日おいしくご飯を食べ,ほどほどにワインを飲み,日々楽しく暮らすことが一番。
と,まあ,こういうことだ。
なんだか,私にぴったりの助言であった。健康に自信が出てきた。