捨てる神,拾う神

先週金曜日に,Hard and Green Waste Collectionがあった。最近平日にブログを書くのが難しくなっている。本業が忙しいのもさることながら,特に先週は,副業も多忙。パソコン入院患者が4台。1台は,リカバリディスクが届くのを待っているが,それ以外の3台の対応で全く暇なしだった。
で,今日,先週の出来事をまとめることにする。

Hard and Green Waste Collectionというのは,カウンシル(東京でいえば区役所)が年2回ぐらいやる,いわゆる粗大ゴミの収集である。
当日は朝6時ごろ収集車が回るため,前日の夜までに,各家,粗大ゴミを家の前のKerb(まあ,歩道といえばいいか?実際には車道の両脇の車道より高くなった部分。一部歩道として舗装されているが,道路沿いは芝になっていることが多い)に出しておく。

我が家は,もうすぐ,お客様が泊まりに来るので,この際ということで,粗大ゴミ大処分を敢行した。

実は,これに先立つこと約1ヶ月半前,イースター休暇の最後の日に,我が家は一大決心して,念願のプラズマTVを買った。
もうすぐ14年になる29インチSony Trinitronカラーテレビはついにお払い箱となった。
また,このプラズマTV(Panasonic製)に併せて,Yamahaのサラウンドシステムも買った。
これにより,16年以上使っていたJVC(日本で言うビクター)のFM,CD,カセットつきのステレオセットも不要となった。

それ以外に,不用品は,仕事柄,お客さんから処分を頼まれたデスクトップPC,また,我が家の古いパソコン。合計5台。
もっともどのパソコンも,部品はいろいろ使いまわして,抜き取ってあるし,捨てるにあたり,個人情報流出はまずいので,ハードディスクは取り出し,これはあとで,物理的に破壊して捨てる。
それから,メモリーチップもリサイクルできるかもしれないので,抜き取ってある。
中には,電源ユニットその他,ほとんどの部品を抜き取って,箱だけになっているものもある。
そして,壊れたADSLモデム,CDやDVDドライブの古いもの,ACアダプタ,ケーブル,キーボードなど,たくさん不用品を出すことにした。

しかし,やはりテレビは捨てるに忍びない。なんせ,今でも問題なく映るのである。それから,ステレオだってまだいける。さすがにCDプレーヤーが古く,CDのディスクとの相性によって,音楽がかからない場合もある。コピーしたものなんかは,まずだめだし,Compact Disk規格を逸脱したコピー防止機能のディスクなんていうのもまずかからない。でも,捨てるのはもったいないよなあ。

そう思っていたので,メルボルン日本人コミュニティーのWebサイトの「売ります」欄に載せたりしたんだが,誰も買い手が見つからなかった。
Ebayで売ろうかとも思ったが,ぐずぐずしていたら,1週間前になってしまい。ちょっと手遅れ。

ついに,粗大ゴミの週となったところで,ダメ元で,会社のスタッフあてにテレビとステレオの貰い手募集のメールを出した。
金は要らない。もったいないから捨てたくないだけだ。でも,もしちょっとでもお金がもらえるならありがたい。ということで出した。

正確には出そうとして,メールを書いていた。写真も取ってあったので,デジカメから取り入れたりしていた。

そこに,斜め後ろに座っているインド系アメリカ人のビンキーが,仕事の質問をしに私のところに来た。
彼女は,ダンナが元々,アメリカの親会社からメルボルンに移って来た。約半年前,ダンナと同じ会社(つまり我が社)に就職,我々のチームに入ってきたのだ。
で,いろいろとまだ物を揃えている最中。

「これなに?」
「ああ,For Saleだよ。テレビとステレオ」
「テレビ,うちで貰おうかな」
「ホント?やったね」
「ちょっとダンナと相談するわ!」

これでテレビは売れたか?

吉凶を待っていると,今度は隣のこれまたインド人,ラージが,いままでの話を聞きつけ,
「マサ,このステレオ,FM聴けるよね?」と聞いてきた。
「もちろん聞けるよ」
「リモコンもついてる?」
「ついてる,ついてる!」
「そうか,じゃあ,これの代わりに使うかな?」といってブックシェルフに載せてある,古いFMラジオを指差した。
「え!いや,そんなに小さくないから,ここで使うのは無理だぞ。写真みてみろよ」
で,写真を見て,
「ああ,ホントだ,大きいな。うーん,じゃあだめか。でも…ウチで使おうかな?いくら?」
「金は要らないよ,捨てるよりいいから」
「そうか,うーんどうしようかなー」

そこにビンキーが,戻ってきて

「ごめん,欲しいけど,今置き場所ないから,止める。ごめんねー」
「いい,いい,No worries」

残念だったが,まだメールを出してもいないのに,この食いだ。感触はいいぞ。そこで,いよいよメールを出す。

Sendボタンを押した。

ラージはまだ悩んでいるが,どうやら買いそうな気配。2-3質問してから,

「よし,もらった!」
よっしゃ!これで一つ片付いた。

ラージと握手するかしないかのとき,向こうからオランダ人のヨスが来た。
その瞬間
「やったね!」
そう思った。

オランダ人は,倹約家である。
ヨスとは,数年前いっしょに仕事をしたことがある。彼は,お弁当のサンドイッチを,もともとその原料である食パンが,売られるときに入っていた袋に入れて来たりする。
日本人から見れば,ドケチである。

その彼が,急いでこっちに来るのだ。
用件は決まっている。

「OK! Which one?」
「TV」
「Done! That’s yours!」

あっという間に片付いた。すごい!

ヨスにも,お金は要らないといったが,「いくらか出すよ,50ドルでどう?」という。
この50ドルという値段がまた微妙だ。私もせめて50ドルぐらい回収できたらと思っていた。
ずばりである。交渉成立。彼はその場で50ドル払った。もう誰にも渡さないということだ。
オランダ人は商売もうまい。

その後,テレビが欲しい人二人,ステレオのスピーカーだけくれないかというあつかましい人一人からメールが来た。
もう遅いよ!ということで,この方々,および全員に,もう売れた旨,メールを出した。最初のメールから3分ぐらいだったか?
その後,「私もメールだそうかと思ってたけど,気づいたときには売れていた」という人も出てきたりした。

なんの事はない。最初から,会社で探していれば,こんなに悩まないですんだのだった。

さて,続いて,パソコンの残骸たち。

木曜日の夜までに捨てるのだが,もう1週間前ぐらいから,ぼちぼち道に不用品を出す家が現れる。
すると,それを物色して,持って行く人もいたりする。

私の場合,上記交渉成立して,テレビを車に積んで出た水曜日の朝,ついでにパソコンその他を積んで出た。
我が家は,袋小路にあるので,その入り口まで持っていかないと,持って行ってもらえないのだ。

袋小路入り口に車を止め,パソコンの箱を一つずつ下ろす。
二つ目を下して,車の方を振り向いたときである。

目の前に身なりのいい,おじいさんが立っている。
ああ,びっくりした!

「ずいぶんあるんだねえ」
「うん,まだまだあるよ」
三つ目を下ろした。
「これは,まだ動くの?」
「いや,ディスクは抜いてあるよ。メモリもないよ」
「ふーん」
というながらこのおじさん,パソコンをいじり始めた。

おいおい,これだけじゃ動かないよー!

4台目を下ろした。これはある日本人駐在員が置いていったもの。元々日本で買った富士通のコンパクトデスクトップ。
液晶ディスプレイと,ワイアレスキーボード,ワイアレスマウス付きだ。
「お,これはすごい,液晶ディスプレイじゃないか?これ動くの?」
「まだ動くけどね,これはほら,コネクタが特殊だから,普通のデスクトップには合わないよ。」
「ああ,残念」
「でもね,実は,ほら,このPCにならつながるんだ。ほーら,富士通製だよ。Made in Japanだぞ。その代わり,さっきもいったけど,ディスクとメモリは抜いてあるよ。それに,なにより,この電源は日本用のもの。100V専用だからステップダウントランスで使うか,パワーユニットを交換しなきゃ,使えないよ」
「そうか,いや,まあ,ちょっと遊んでみるかな」

おいおい,おじいちゃん,持って行ったよ。
「え,持って行くの?」
「うん,ちょっと遊んでみるよ。」
「あ,じゃあ,このキーボードとマウス。これもセットだ。ワイアレスだよ」
「おお,こいつはいいね。じゃ貰っとく」
そういうと,まとめて道路の向い側に停めてあったメルセデスベンツ(といっても1980年代のもの)のブート(トランク)にこれをつっこんだ。

「あんた,ショップでもやってんの?他になにがあるんだい」
「ショップは持ってないけどさ,いろいろ直したりしてるんだ。あとは,もう一台。これでおしまいだ。それと,キーボード。モデム。ケーブルとか」
「ああ,じゃあ,まとめて全部貰おう」
「あ,そのADSLモデムは壊れてるよ。こっちのダイアルアップモデムは多分まだ動く」
「じゃあ,両方貰おう」
「こっちは壊れてるって」
「まあ,遊んでみるよ」
なんだかんだいいながら,このおじいさん,私が下ろすもの,ほとんど下ろすそばから持っていった。

夕方帰ってみたら,ガラだけのパソコンのシャーシ1台を除いて,すべて持ち去られていた。
すごい!あーびっくりした。

しかし,

あのタイミングはなんだったんだ。

こっちが下ろし始めて,10秒後には,後ろに立ってたぞ。
まるで,私が今日,ここにたくさん,パソコン部品を置きに来ることが分かっていたようだ。
そういう人が現れるのをずーと待っていた?でもどうして,場所が分かるんだ?

うーん。

やっぱりあれは妖怪だったんだろうか?あんないい身なりをして,メルセデスベンツに乗って。いつの間にやら現れた。そうに違いない!

西洋妖怪Stillwell

私はそのおじいさんにそういう名前をつけたのだった。

ドケチのオランダ人と西洋妖怪のおかげで,ほぼリサイクル完了。地球に優しいことをした。ってか!?

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