我が家のフレンチシェフ

今日は,夫婦で娘のフランス語の宿題を手伝った。
といっても,私はフランス語を習ったことはない。まして読み書き,会話など,全くできない。だから普段,フランス語の宿題の手伝いなどできもしないし,ありえない。しかし,今回の宿題は,両親の協力がないとできないようにできていたのである。

どういう宿題かというと,3コース(オントレ,メイン,デザート)のフランス料理のメニューを考え,そのレシピをフランス語で書いてまとめる。これが第一段階。次に,これを実際に作って,両親,あるいは招待したお客にこれを試食してもらって,その模様を写真に収める。

つまり,我々が手伝うことは,できた料理を食べてあげることである。おかげで今日は我々は夕食の支度を一切やらないで済んだ。こんな宿題なら毎週出していただきたいものだ。ただ,食後にコメントを書かないとならない。コメントはもちろんフランス語ではなく,英語でいいのだが,ちゃんと自筆で書き最後にサインをしないとならない。

娘は,もう数週間前から,メニューを決めるためのリサーチをやっていた。Webサイトを調べたり,Googleの自動翻訳にかけて,フランス語のレシピをひも解いたりしていた。そして,今日,いよいよその試食にこぎつけた。

メインはチキンということで,フランスの白ワインを買ってくるように指定された。これは未成年が買い求めるわけにもいかず,我々が近くの酒屋で調達した。

これが,Le Menu。つまりは本日のメニューである。こういう演出も宿題の一部である。

最初はオントレ(前菜)のLes Huitres Fraiches。英語で言うとThe Fresh Oysters だそうだ。日本語で言えば生牡蠣。まあ,これはコテコテのフランス料理であるとは言えないけれど,フランスでも前菜として,よくあるチョイスだとフランス語の先生が言っていたそうだ。ごらんのとおり,テーブルクロスやキャンドルなど,いつもとはちがうテーブルセット。これも宿題のうちだ。

さて,メインである。

Poulet a l’Ail

Chicken with garlic。鶏のニンニク風味といったところか。塩コショウとパプリカで味付けしたローストチキンに,オリーブ油でとろとろになるまで炒めたニンニクが一房付く。ニンニクの皮をむいて,中身をつぶして肉に付けながら食す。香ばしいチキンとニンニクの香りが食欲をそそる。

奥に見えるのが付け合せのサラダ。

La Salade a l’Huile de Noix

クルミ入りサラダ。シンプルなグリーンサラダにクルミがちりばめられている。

デザートは2段構え。まずは,

Fromage

ここがフランス料理の真骨頂。デザートにチーズである。
今日はあいにくフランス製のチーズが見つけられず,やむをえずオーストラリア製カマンベールを買った。正しくはカマンベール風オーストラリアンチーズと言わないとおこられるかもしれない。

次に,スイート。

Mousse au Chocolat

これは分かる。チョコレートムースだな。実際にはこれにブルーベリーが載っていた。

そしてCafe。コーヒーである。

メニューの右側,Les BoiresというのはThe Drinksということだそうだ。

Eau Minerale。オウミネラール。ミネラルウォーターだね。
Vin Blanc。ヴァンブラン。白ワイン。
Cafe。コーヒー
The。テ。紅茶。
この辺は,私でも分かる。

Chocolat Chaud。ホットチョコレートである。ショコラショと読むそうな。
飲み物はもちろん,この中から選んでくださいということで,すべて出てきたわけではない。ミネラルウォーター,白ワイン,コーヒーを順次飲んだ。

コメントを書けと言われて,えー,面倒くせーと思ったが,最後まで協力しなければならない。とはいえ,仕事の話題でもないし,ワインも入っているし,英語でいきなり書けといわれてもそうそうスラスラと出てこないから,日本語で感想を言い,娘に訳させて,それを私が書き込んだ。

「Tres Bien! 娘の料理は我々の口に合っていた。フランス料理というと,脂っこくて重いという印象を持っていたが,今日の彼女の料理は,それが誤りであることを証明してくれた。
彼女の今日の料理は失敗もなく,すべての料理がお客様に勧めても恥ずかしくないレベルだった。」

といった意味のことを書いた。ベタ褒めですな。親バカと言わば言え。親としてウソは言っていない。

宿題はこれで終わったわけではなく,このあと,この料理がフランスのどの地方の料理かといった背景を詳しく調べ,レポートしないとならない。

料理という一つのテーマで,様々なことを学び,フランス語を単なる言語としてでなく,文化を含めて身につけさせる。そういう意図が見える。こういうところがオーストラリアの学校の学習法のいいところだと思う。念のために書くと,これは女の子のみの宿題ではなく,フランス語を取っている生徒全員に出された宿題だ。いくら21世紀といえども,料理が苦手な子はいるし,まして男の子は,全く料理の勘がない子が多いらしい。フードテック(調理実習みたいなやつ)やキャンプのたびに娘が嘆いている。私も今でこそ料理できるが,中学生のころなどは,即席ラーメンを作るぐらいしかできなかった。そういう状態で,こんな宿題が出たら泣くだろうな。

それにしても,同じヨーロッパ語族の言語を学ぶというのは,英語を話す人にはものすごい有利なんだなと思う。娘はYear 7(中学1年)からフランス語を取っているが,2年チョットでここまでできるようになるのである。たとえば日本の中学3年生が英語でこんなことできるだろうか?あるいは,ここで日本語を習っている生徒に日本語でこんなことができるだろうか?たとえプレップから9年間やっていても無理だろうと思う。
そうなんだけど,フランス語ができるオジーがその辺にゴロゴロしているかというと,そうではない。
言葉というのは,使わないとすぐに忘れてしまうものということなんだろう。

8月は娘の友達が日本から遊びに来て,2週間我が家に泊まった。友達と本人の誕生パーティーもあった。そんなこんなで,何かと忙しい週末が続いたが,この最後の日曜日はおかげで優雅な夕食を楽しむことができた。娘の成長を実感したひとときだった。

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