天地明察?

本日は2013年6月13日。中学高校のクラブの先輩からいただいた日本の日めくりカレンダーによれば,本日は旧暦で5月5日,すなわち端午の節句である。

TangoSekku

私が所属する開発チームは,中国,珠海(Zhuhai)にもメンバーがいる。彼らは今週月曜日から昨日12日の水曜日まで祝日で休みだった。

この休日,我々には英語で「Dragon Boat Festival」という名目で通知された。しかし,何かのメールに中国語のタイトルが残っており,そこに「端午節」という言葉を見つけた。それで,この歳になってやっと,Dragon Boat Festivalというのが,端午の節句に因んでいることを知った次第である。ドラゴンボートレースは香港のものが有名で,題名は忘れたが,亜州影帝,周潤發主演の映画にも出てくる。このレースについてはこれはこれで知っていたわけだが,これが端午の節句に関係あるとは,今まで知らなかった。

中国人は今でも旧暦で正月を祝うので,なるほど,この時期に端午の節句というのもうなづける。で,件の日めくりカレンダーを見れば,5月13日が旧暦の端午であるとあり,納得。

しかし,あれ?じゃあなんで,今日はもう中国は休みじゃないの?
で,うちのチームのメルボルンオフィスにいる香港チャイニーズに聞いたところ,なんとドラゴンボートレースは,昨日だったという。これって端午の日にやるんだろうと聞くとそうだという。
おかしいな。端午は今日だろう。と言ったら,いいや昨日だという。え?日本と中国で暦が違うのかよ?

で,調べてみた。違うのであった。そういえば,去年,天地明察という小説を読んだ。江戸時代に使っていた中国由来の暦のずれが無視できなくなり,日本独自の暦を作る話なのだが,ということは,今でも中国ではそのずれた暦を使い続けているのだろうか?というと,これも違うのであった。いや,おそらく正確には両国の暦は異なるのだが,現在では算出法に大きな違いはなく,同じ暦と見做してよい。この一日の食い違いは,別の原因から来ているのだった。

まず,太陽暦から話を始めると,現在の太陽暦では,こういうことはない。しかし,時差はある。なぜなら,時刻は地球上の自分の位置(経度)と太陽の位置関係で決まるからである。太陽の南中(南半球なら北中)時がその場所の正午である。ただし,国や地域ごとに標準時子午線を決めて,地域内では共通の時刻を使っている。それにしても,異なる地域では時刻が異なる。これはまあ,常識だろう。で,たとえば日本が0時30分だったら,中国は前日の23時30分であり,このように,1時間だけ両国の日付が異なる時間帯がある。これは分かる。

次に,太陰暦であるが,もちろん時刻の決め方は同じなのだが,こちらは,日付の決め方も根本的に太陽暦と異なる。日付は月の運行,平たく言えば,月の満ち欠けで決まるのである。十五夜とか三日月とか,月の満ち欠けに日付がセットになっていることからも分かる。これは,実は便利である。昼間はともかく,夜,月を見れば,だいたいの日付が分かるわけだ。
ところで,これをだいたいではなく,正確に測ると月齢という概念が出てくる。きっちり満月だと月齢15(正確には14.8あたりらしい)。そして,きっちり新月,つまり地球から見た月に一切太陽の光が当たっていない瞬間(うまく重なれば地球上のどこかで日食が起きる)を月齢0とし,これを朔というそうだ。

月の公転と地球の自転は,同期しているわけではないから,この朔は,たとえば日本なら日本の標準時において,何時何分に起きるのかはそのときそのときで異なる。ところが,この決まっていない朔の瞬間が属する日に旧暦では月が改まり,その日を一日(ついたち)とするのである。ちなみに「ついたち」は朔日とも書き,「月立ち」が語源だそうだ。

で,こういう場合がありえる。朔が日本では0時30分に起きる。このとき,中国,香港では時差があって,1時間時刻が遅れており,前日の23時30分である。
今年の場合,太陽暦日本時間の6月9日の午前0時から1時の間に朔があったので,日本では6月9日が旧暦の5月1日。そして中国ではそのとき6月8日の23時から24時の間だったため,6月8日が5月1日になったというわけである。で,日本の旧暦端午は本日。中国の端午は昨日という説明が付く。

ということで,太陰暦は,時差の関係で地域間で日差が出る場合があるというお話でした。
今年の旧暦5月はずっと両国で日付が1日ずれた状態が続くわけで,これは改めて驚くべき現象だと思う。

参考: http://koyomi.vis.ne.jp/doc/mlwa/201204220.htm

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