南半球麻雀ローカルルール

メルボルン在住の日本人のコミュニティーに,麻雀を定期的にやるグループがある。いくつか存在するかもしれないが,その最大手は,毎週開催,常時3-4卓を囲むようである。
この週末,そのグループの常連のご夫婦と麻雀をする機会があった。で,このグループの麻雀には独特のローカルルールがある。
南半球で行うため,場が東南回しでなく,西北回しで半荘を行う。
…というのは冗談だが,もともと,初心者のご婦人を中心に輪が広まっていった経緯があり,麻雀のルールでハードルの高い,点数計算を単純化しているというのが特徴だ。現在では,そんなに初心者はいないのだが,この簡易計算法が定着している。

符の計算を一切せず,子の一翻は1000点,親の一翻は1500点として計算する。すべて30符とみなすと考えてもいいが,ここから単純に倍々していくので,二翻以降が普通と違う。二翻は子2000でいいとして,親は2900ではなく,3000というなじみのない数字になる。三翻は子が3900ではなく4000,親は5800ではなく6000である。
同じ二翻でも,本来なら子でリーチ,ドラ1のロン上りなら2600(40符2翻),ツモなら2900(30符3翻),またリーチ,平和だったらロン上りで2000(30符2翻),ツモなら2600(20符3翻)となるところ,これがすべてロン上り2000点,ツモ上り4000点(子1000,親2000)となり,一般に平和以外の手に辛く,ツモ上りに甘い点数となっている。
また,符計算をしないので,カンを2回ぐらいして合計70符になるはずの場合,たとえば場風牌と三元牌のみの2翻で本来なら4500のところ,2000点にしかならない。

まあ,こういう問題点はあるが,この計算法は,麻雀を劇的に身近にする。20符,30符をのぞけば4翻以上は満貫であり,またハネ満以上に符数は無関係となる。こう考えると,満貫未満の計算法に多少の誤差があろうとも,この計算法はなかなかいいのではないか。そう思えたのであった。

このローカルルール,もうひとつ特徴がある。それは,「ナシ・ナシ」というところだ。私は今まで大抵の場合「アリ・アリ」でやってきたので,これはなかなかきつかった。もともと初心者の集まりだったはずのこのグループで,なぜ難しいナシ・ナシが定着したのかは分からない。おそらく,初心者グループを教えるエキスパートのおっさん連中がおり,現麻雀グループができるより前に,この人達の間でナシ・ナシが定着していたのではないかと推測する。

ところで,このローカルルール,最近条文化され,紙に印刷されたものが存在するので,見せていただいた。ところが,最初のナシにあたる「食い断」については確かにナシと明記されているのだが,次のナシにあたる「先付け」については,どこにも明記されていない。(「先ヅモ」がマナー違反ということはご丁寧に明記されているのだが)

通常普段やらない人と麻雀をする場合,あまり細かいところはこだわらないが,この二点のアリ,ナシについては,一応開始前に確認するのがお約束である。この条文化されたローカルルールにも,最初の方に出てきていい非常に重要な約束ごとであるはずだ。
ところが,先付けについては,「ナシ」と明記されておらず,食い断についても平和,一盃口と同列に書いてあって,この三つは面前でないと作れないとしてある。平和と一盃口は鳴いたら作れないのは,当たり前であり,唯一,断公九についてのみ,選択肢があるはずである。

ということで,このローカルルールは,麻雀の基本ルールすら知らない人のためのルールブックという位置づけになるだろうか。

そうは言っても,毎週やっている方々だから,たまにやる私などは,なかなか勝てるものではなく,覚えたての妻などは,白,發が晒されているのに勝負に出て,あろうことか,初物の中を切ってリーチして大三元を振り込んでしまう始末であった。怖いもの知らずもここまで来るとすごい。あー,お金がかかってなくて良かった。

追記

このルールを後でよくみたら,2番目に単に「先付け」と書いてあった。あまり目立たないので私も見落としていたようだ。
しかし,この「先付け」について,アリともナシとも書いてない。ただ,ずばり「先付け」と書いてある。

私は普段,誤解を避けるため,最初に数牌などでチーしておいて,後から三元牌や風牌などをポンすることを「後付け」と呼んでいた。
ところが,人によってはこれを「先付け」と称している。なんでかな?などと思いながら,この相反する言葉を同義語と思っていた。

結論をいうと,元々は同義語だったらしいのだが,現在では,先付けは後付けの反対語となっている。

こう書くとますます混乱するのだが,これには歴史的な理由があるようだ。

「先付け」というのは,もともとは金融用語で,小切手を発行するにあたり,未来の日付を書くことをいうらしい。つまりは「先の日付け」の略であった。
これに倣い,まだ役が確定しないのに,とりあえずポンやチーをすることを「先付け」と呼んでいたらしい。これは,要するに,あがるまでに役を作ることであるから,「役は後付け」しなければならない。

しかし,この本来の「先付け」の意味を初心者が勘違いし,先に役を確定することを「先付け(先に役を付ける)」と呼ぶようになったようである。
「後付け」というのも,このとき対義語として発生した言葉であろう。

というわけで,このローカルルール。実は「先付け」として,ルールに明記されていた。
これは,ナシ・ナシの2番目のナシに相当する。「先付け」とはつまり「後付けナシ」という意味であった。

ひとつ勉強になった。

なお,混乱を避ける意味でも,この「先付け」は「完全先付け」と呼ぶのが好ましいようである。完全でない先付け,完全でない「後付けナシ」には,いろいろな解釈の違いがあるため,もし完全でないのなら,細かい既定が必要になるようだ。

また,関東では確かに「アリ・アリ」が主流だが,関西ではときに完全先付けにしている場合が見られ,特に3人打ちでその傾向が顕著のようである。すると,どうもナシ・ナシは関西出身の人がメルボルンに持ち込んだもののようである。メルボルンは大阪市と姉妹都市であり,関西人が多い。またトヨタの工場があることから,愛知県出身の人も多いことから,かなりそうである可能性が高いと思う。

「南半球麻雀ローカルルール」への3件のフィードバック

  1. はじめまして。メルボルンで日本人の方が集まって麻雀などをしているところを探していて、こちらにたどり着きました。実は、定年した父を日本から呼び寄せたいと思っているのですが、以前住んでいたQLDは全く日本人がいない場所に住んでいたため、もうオーストラリアはこりごりと思っているようです。
    メルボルンには4年前に移ってきて、ぜひ今度父が遊びにきたときには、現地で住まわれている日本人の方たちと色々交流をさせてあげればなぁと思っています。
    詳細など教えていただけますと幸いです。
    よろしくお願いいたします。

    1. ハイヴェン麻衣さん,コメントが承認制になっていまして,このところコメントを注意していなかっため,承認遅れましてすみません。お返事はまた改めて書きますが,今回はとりあえずお詫びのみ。ひとつだけ。お父様はゴルフなさいますか?

      1. ホープコネクションという団体をご存知でしょうか?
        メルボルンで,困りごとなどの電話相談を受けているボランティアグループです。
        ここが主催するシニアサービス,「鈴の会」というのがあり
        私も年に数回ここでパソコン教室の講師をしています。

        鈴の会は毎週木曜日にアクティビティーを催しておりますが,
        毎週1時から4時半ぐらいまで麻雀もやっているようです。

        詳しくは下記にお問い合わせください。
        また,ホープコネクションのニュースレターは日本食スーパーなどに
        おいてあります。最新号以外は,Webサイトからもダウンロードできます。

        ホープコネクション
        e-mail: info@hopeconnection.org.au
        Web Site: http://www.hopeconnection.org.au

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