太陽系を巡る散歩: Melbourne Solar System

先週土曜日に,セントキルダビーチを散歩した。ここに一つ,私のメルボルンのお気に入りポイントがあるので,紹介したい。
といっても,ポイントじゃなくって,Pointsと複数形かな?
メルボルンにお住まいの方,特にお子様にお勧めだが,老若男女を問わず誰でも十分楽しめると思う。
本日紹介するのは,St Kilda Beach(セントキルダビーチ)にあるMelbourne Solar Systemだ。
まあ,このサイトをみていただければ大体分かる。

Melbourne Solar System

Jupiter
Jupiter 木星

セントキルダビーチ(St Kilda Beach)から,海を右に見て,南方向に約10分ほど歩くと,セントキルダマリーナ(St Kilda Marina)があり,モーターボート,クルーザーの類がたくさん係留されている。このマリーナの外海への出口に小さな灯台があるが,この灯台を先端にいただく,海に3角形に突き出た部分を,St Kilda Marina Triangular Reserveと呼び,もともとは単なる草地だったが,整備され,現在はBBQやテーブルなどのピクニック施設,スケートボードボウルなどがある。こんなところ。

http://www.portphillip.vic.gov.au/marina-reserve.htm

地図でいうと,
Google Map: St Kilda Marina & Surrounding Foreshore 

で,Melbourne Solar Systemは,ここを起点とする太陽系の10億分の1のスケールモデルである。
太陽系の惑星を同じ縮尺で表して,大きさを比較するような展示は,博物館など,いろんなところにあるし,百科事典にも出ているだろう。しかし,このMelbourne Solar Systemは,それらでは成し得ない壮大なモデルなのである。
何がすごいかというと,太陽を基点として,各惑星間の距離までも各惑星の縮尺と同縮尺で再現してあることだ。つまり,太陽系全体の完全スケールモデルなのである。
これだけだと,何ですごいのか分からないかもしれない。しかし,逆に実物を見れば,これがいかに成し難いかが理解できるはずだ。ということで,何がすごいかピンと来ない方は,とりあえず,読み進んでいただきたい。

太陽の直径は約140万kmなんだそうで,これを10億分の1にすると,直径が1.4mとなり,その回りをとりまく惑星がこれよりかなり小さくなることを思えば,この程度の縮尺がなかなか適当であることが分かる。これが太陽である。

Sun
Sun 太陽

それでは,同縮尺で,太陽と第一惑星である水星の距離はどのぐらいになるかというと,これが約60m(6000万km相当)なのである。下の写真は,太陽を別角度から見たもので,ちょっと離れたところにコンクリート製のポストが見えると思う。その上端に水星のモデルがチョコンと乗っているのだ。

水星(赤矢印)
水星(赤矢印)

同様にしていわゆる内惑星とか,地球型惑星と言われる惑星の太陽からの距離を換算すると,

水星:60m
金星:108m
地球:150m
火星:227m

となる。
火星あたりで苦しくなるが,まあ,このあたりまでなら,なんとかひとつの建物に入れられないこともない。
しかし,ここから先,惑星の間隔は飛躍的に大きくなってしまう。

木星:778m
土星:1.4km
天王星:2.9km
海王星:4.5km
冥王星:6.9km

ちなみに最後の冥王星は,現在では惑星の仲間ではなく「準惑星」という扱いになっているが,これが作られた時点では,その分類が諸説入り乱れてはっきりしていなかったため,従来の分類をそのまま採用して,仲間入りさせている。これを含めないとしても,海王星まで4.5kmであるから,もうこれはひとつの施設に押し込むことは不可能だ。
それじゃあ,縮尺をもっと小さくして,たとえば100億分の1にすればどうか?冥王星を仲間はずれにしたとして,海王星までの距離が450mとなってしまい,まだまだ大きいけれど,これなら,なんとか一つの建物なり,敷地内に収められて,ずっといいようにも思える。しかし,今度は各惑星が小さくなりすぎてしまう。太陽は直径14センチとなり,まあ手ごろな大きさでいいけれど,これだと地球はほんの直径1.3ミリぐらいの小さな小さな玉になってしまうのだ。これでは展示の意味もないだろう。

ということで,直径と間隔を同縮尺にするということを大前提とするならば,やはり10億分の1ぐらいが適当であるというか,もう,これ以上小さくできないのだ。

で,これを海岸沿いにポツンポツンと置くことにしたのが,このメルボルンの太陽系なのである。なぜ海岸線にしたのか?これには理由がある。このあたりの海岸線には,ずっと遊歩道がつながっているのである。あるいはバイクトラック(サイクリングコース)もある。6.9kmは歩くとなると大変だけど,自転車なら,比較的短時間で回れる。大事なのは,自動車ではなく,自分の力でめぐって,距離感を実感することなのだ。

Sun
太陽のプレートに示された地図。黒丸が太陽と惑星の位置を示す。

さて,実際に太陽から海を左にみて,北に向かって海岸線の遊歩道を歩いてみる。

まずは60メートル。ゴルフだと,ウェッジでハーフからスリークオーターぐらいのスイングでグリーンを狙う距離。ここに水星がある。

水星の大きさは,5mm足らず。銀玉鉄砲の弾のようなものだ。60メートル離れたところに銀玉である。直径1.4mの太陽に比べなんとちっぽけなことだろう。

水星
水星

上記のとおり,そこからさらに48m,太陽から108mのところに金星。大きさは12mm。さらに150m地点,5番アイアンでちょうどか?というような距離に我が地球がある。大きさは13mmだ。ちなみに,パチンコ玉が11mmなんだそうで,金星はそれより一回り,地球は二回り大きい。

Earth
Earth

 

そして,地球には衛星の月が従っている。その間38cm。月は水星より小さく,ボールベアリングの玉のごとしである。

地球と月
地球(右奥)と月(左手前)

火星は227m地点。もうドライバーでやっと届くか届かないかの距離である。大きさは地球と月の間ぐらい。直径約7mmである。

この後,外惑星になる。ゆっくり歩くと10分近くかかって,ようやく木星だ。778m地点。これはさすがに大きく,直径14cm。すこし上下がつぶれたような格好。
ここから,太陽は,どこにあるのか,ほとんどわからない。知っていればやっとあれかなと見分けられる程度だ。(写真赤矢印のあたりにあると思われるが,拡大してみても確認できなかった。)

木星
木星

 

実は,今回は歩いたのはここまで,土星まで足を伸ばしてもよかったのだが,他に用事もあり,土星から先は,何かの折にまた訪ねてみたい。

こうして自分の足で歩いてみると,太陽系とかいっても,実に疎な空間であることがわかる。それなのに,互いが重力で引かれ合っているというのだから,不思議だ。そして,地球の存在のなんとちっぽけなことか。このちっぽけな,パチンコ玉よりちょっと大きいだけの玉の表面にへばりついている我々は,さらにちっぽけなのだ。ちなみに,10億分の1の私の身長は1.7nm(ナノメートル),あるいは1700ミクロンとでもいうか。これがどういう大きさかというと。

  • 現在主流のハードディスクのディスクとヘッドの間隔(ヘッド浮上量)が2-3nm
  • DNAの螺旋の直径が2nmだそうだ。私はこの間に入り込むことができるわけである。
  • タバコの煙の粒子はこれより大きい。

太陽系と比べるだけでも,こうなのに,全宇宙と比べたら,もっと大変なことになる。これについては,また次の機会に書いてみたい。