再生可能エネルギーなんてあり得ない

理系の同期の皆さん、あるいは、自分はどちらかというと理系だと思っている方でもいい。
あなたは熱力学の第二法則を覚えているはずです。

私は文系だと思っている皆さん。熱力学なんてしらないよと思っている皆さんも聞いてください。
ちゃんとわかりやすく説明しますから。
第二というからには第一があります。ではまず第一から順番に説明しましょう。

熱力学の第一法則は、熱力学以外の分野でも「エネルギー保存の法則」とか、「質量保存の法則」として知られていることと同義です。

体重が気になるあなた。気になるが、しかし、今、チョコレートが食べたいと思っている。
このチョコレート、ちょうど10gだとします。
これ一個を食べることで、あなたの体重はどれだけ増えますか?
10g食べて、100g体重が増えることはありません。「高々10g増える」だけです。

もちろん、もっと長い目で見たときは、体重が増えるメカニズムを理解しなければなりません。したがってこのチョコレートを食べたことによる身体へのなんらかの効果(たとえば体質の変化)が、あとあと脂肪を蓄えることに寄与し、結果的に数日後に10g以上の体重増加をもたらすかもしれません。しかし、この10gを超える体重増加はこのチョコレートが直接化けたわけではないのです。その後に食べたいくばくかの食物が、差し引きで10gを超える体重増加に寄与したのであり、10gのチョコレートはこの効果のトリガーになったと考えるべきでしょう。

ある閉じたシステムの中で、何らかの化学変化が起きたとき、そのシステムの合計の質量が増減することはありません。また、質量のみならずエネルギーまで範囲を広げて考えたとき、その反応に必要なエネルギーと、それによってそのシステムに蓄えられたり、あるいは放出されるエネルギーの総和が変わることもありません。これが質量とエネルギーの保存則で、熱力学の第一法則にあたります。

ではいよいよ第二法則です。

ある暑い夜。眠れないので、冷たいビールでも飲もうかと冷蔵庫を開けました。
庫内はもちろん冷たい空気に満たされています。ああ、冷たくて気持ちいい。
あれ、じゃあ、冷蔵庫を開けっ放しにすれば、室内にも冷気が広がるはずじゃないか。
なんだ、どうしてそれに気づかなかったんだろう。よし、開けっ放しにしてしまえ!

といって開けっ放しにする人はいません。どうしてでしょう?

なぜなら、冷蔵庫という装置は、庫内の熱を庫外に追い出すことで庫内を冷たくしているからです。
しかし、このとき、庫外に放出される熱は、庫内から奪われた熱の量と同じではありません。
このとき、必ず放出される熱の方が奪われる熱より多くなるのです。

あれあれ、さっきはエネルギーの総和は変わらないと言っておいて、こんどは放出熱の方が必ず多くなる?
おかしいじゃないの?
とお思いでしょうか?

ところがエネルギーという観点で見ると、実際には冷蔵庫は外部から電気というエネルギーを供給されて初めて作動します。
冷やされるメカニズムを詳しく書いたら長くなるので省略しますが、とにかく庫内から熱を奪うプロセスで、電気エネルギーが仕事をしており、このときこの電気エネルギーが「熱エネルギー」として冷却システムに余計な熱を加えます。加えますが結果として庫内の熱については庫外に放出される。そして放出されるときに、電気エネルギーからの熱も一緒に放出されるので、熱の総和としては、庫内を冷やすと、必ずそれより多い熱量が庫外に発生するのです。したがって開けっ放しにしたら、かえって部屋は暑くなるばかりです。

じゃあ、エアコンはどうなんだというと、エアコンは単に冷蔵庫の仕組みを家全体に置き換えただけです。だから室内から奪った熱は戸外に出るが、そのとき奪った熱以上の熱が戸外に発生するというわけです。これがヒートアイランド現象の犯人のかなりの部分をしめるものです。

さて、話が長くなりました。第二法則とは何かというと、「エネルギーを利用したとき、必ず廃熱が出る」ということです。エネルギーの観点から見ると、「利用可能なエネルギーは利用すると利用できないエネルギーに変わる」という言い方もできます。
この逆はありません。絶対に。絶対に。絶対にありません。

熱力学の第一法則と第二法則は絶対真理であり、これが覆ることはありません。
ただし、エネルギーと質量は変換できることが分かっています。これを利用したのが核分裂や核融合で得られるエネルギー、つまりは原子力エネルギーです。しかし、エネルギーと質量、いずれかを他方に換算して計算すれば、核反応の前後でもエネルギーと質量の総和が変わることはないのです。

さて、第二法則を発展させて考えると、すべて、エネルギーが仕事をすると、そこに必ず廃熱が発生する。したがってエネルギーが100%仕事として利用されることもあり得ない。ということが分かります。これは、エネルギーが形を変える(変換される)ときにもあてはまります。つまりエネルギーを別の形態に変換するとき、かならず損失が生まれるのです。たとえば、石油を燃やして、水を蒸気に換え、この蒸気の圧力でタービンを回し、タービンで発電機を回して電気エネルギーを得る。火力発電のプロセスですが、ここには多段階にわたるエネルギー形態の変換があり、その各段階でものすごい損失が出ます。それでも火力発電は原子力発電より高い割合で電気エネルギーを得ることができるのだそうです。

さて、ここまでわかったら、

「再生可能エネルギー」

という近頃はやりの言葉をよーく吟味してみてください。

一度利用したエネルギーを再生することは、不可能ではありません。
しかし、第二法則により、もし再生できたとして、それによって再利用できるエネルギーは、再生に必要なエネルギーより少なくなるはずです。
その逆はありません。絶対に。絶対に。絶対にありません。

たとえば、最近の自転車には、モーターアシストがついているものがありますね。このモーター、電気で回すわけですから、じゃあ、この電気は発電機で作ればいい。で、どうせ自転車なんだから、ペダルで発電機を回し、これで得た電気をバッテリーに貯めて、そのバッテリーからの電気でモーターを回して自転車を走らせるというのはどうでしょう。

はたして、この自転車と普通の自転車とどちらが楽でしょうか?

どう考えても、普通の自転車の方が楽ですね。

この、ばかばかしいペダル発電式自転車の発想こそが、「再生可能エネルギー」の基本です。

うまくいくわけがありません。
そもそも化石燃料を使わないために考えているはずの「再生可能エネルギー」は、1のエネルギーを再生するために1より多いエネルギーを必要とします。そのエネルギーは再生可能エネルギーのみではまかなえません。したがって、一部は化石燃料を消費します。そして、再生する対象としてのエネルギーの大元はすべて化石燃料(ここでは原子力は除外する)ですから、全体としては、1のエネルギーを得るために、1より多い化石燃料を必要とします。さっきいったように、絶対に。絶対に。絶対にその逆はないのです。

「いやいや、再生可能エネルギーというのは広い意味で言っているのであって、実際にはそうはならない。」
と反論する人もいるでしょう。
「実際には、再生可能エネルギーと言っているのは、自然エネルギーが大部分なのであって、そんな石油の無駄遣いにはならないよ。」

そうですね。私もそのぐらい分かっています。

しかし、私が危惧することは、

「再生可能エネルギー」

と言う言葉がでてきても、誰も

「それはありえない!」

と言う人がいないということです。
それどころか、これこそが、脱原発の切り札だと、手放しで喜んでしまっている人が多い。

このことです。

少なくとも、理科系の人は

「再生可能エネルギーなんて矛盾している。だめに決まっているだろう。自然エネルギーというならまだ話はわかるが」

と言ってほしいのです。

しかし、実際には、なんたらという、ある国の総理大臣が、堂々と
「再生可能エネルギー法案」
みたいなものを(最後っぺとして)作ろうとしているではありませんか。
この人、れっきとした理系ですよ。これは、どういう冗談でしょう。

そして、じゃあわかった、再生可能エネルギーとはいえ、そのほとんどが自然エネルギーという意味なんだなと。
ではその、自然エネルギーとは何か。
これについてもよく考えていただきたいのです。
そんなに自然エネルギーがうまくいくものなら、今頃とっくにうまくいっているはずです。

え、ヨーロッパではもっと進んでいる?

本当でしょうか?

私はそうは思いません。確かに日本よりずっと進んでいて、うまくいっていますが、それは

「政治的にうまくいっている」

あるいは

「商売としてうまくいっている」

だけではないかというのが、私の推測です。
かなり、自信のある、たとえ当たっていなくとも、「当たらずとも遠からじ」の推測と自負しています。

自然エネルギーは、基本的に「利用しにくい」エネルギーなのです。
だから今までは、火力や原子力で電気を得ることが主流だったのです。

それを無理やり利用しようとすれば、取り出すより多くのエネルギーを消費します。そして、消費するものの一部は化石燃料が担わなくてはならないのであって、つまりは化石燃料を無駄遣いすることになります。

自然エネルギーは全部だめと言っているわけではありません。
たとえば水力発電は、非常にうまくいっている自然エネルギーの利用法です。

しかし、ダムを作るために、大量に資源と、エネルギーを使っていることも忘れてはなりません。
元を取るには、大変な年月を要すはずです。自然破壊も忘れてはいけません。

水力にしてこうなのに、他のもっと利用しにくいエネルギーにおいて、どうなのか。

私が言いたいことは、だから原発を止めるな…ではありません!
原発は今すぐ止めるべきです。しかし、まず

「再生可能エネルギー」

などという、余計に石油を減らすようなバカな発想を捨てること。そして

「自然エネルギー」

も基本的には怪しすぎるということ。まずは

「本当にうまくいくの?」

と疑ってかかるべきものであるということです。

孫さんは、商売人としては偉いかもしれない。

しかし、彼がやろうとしていることが、エコというなら、それは違うと思います。
エコという商売はないと思います。
商売することは、ほぼ、イコール反エコだと私は思うのです。

この話は,まだ続きます。

「再生可能エネルギーなんてあり得ない」への2件のフィードバック

  1. テレビに出てくる科学者が「再生可能エネルギー」というたびに、似非科学者ではないかと疑っております。勘ぐるに、政治色のある人ばかりを登場させている気がします。IPCCも科学者とは名ばかりで、実際は政治家・商人なのではないかと思います。久しぶりに、スッキリしたブログに出会ってうれしく思います。

  2. 正に僕もそう思います。再生可能エネルギーなんてあり得ません。
    あと数十年、化石燃料をうまく使い、そののちは核融合にまかせましょう。太陽光発電とか、風力発電なんか自然破棄もいいとこです。

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