赤柱飯店の巻:香港的旅遊日記其四

4月24日 日曜日のつづき

隣のNIKEダイバーズウォッチと瓜二つのスイスアーミーダイバーズウォッチを売りつけたおばちゃんに、この辺で安くておいしい店はないかと、リンダさんが聞いてくれた。で、そのウソ八百おばちゃんの勧めた店に行った。アーケードの途中で横道にそれ徒歩2分。たどりついたところが「赤柱飯店」というそのものズバリの飯屋だった。おせじにもキレイとは言えない店。客は全員現地人で白人ゼロ! 当然ながら、客全員が広東語でけたたましく喋っており、いきなりトリ小屋にぶち込まれたようである。ちなみに、あんまりきたないので、写真撮るのを忘れた。

入っていくと、テーブルはみんな埋まってる。

「あー、リンダさん、いっぱいだね。どうなんだろ」

リンダさんが店の人と話している。ああ、やっぱりこういうところで現地人がいるとありがたい。

相席ならいい。ということのようである。というかウチじゃみんな相席と決まっているっていう態度だった。

入ってすぐ右に進んでキッチン入り口付近の大きな丸テーブルにぎりぎり4人分の席がある。ここで食うのか?

左隣はおっかねえおじさん二人。右は親子連れ。

我々が座るか座らないかのタイミングで、店のおっちゃんが食器を配る、つーか投げる。ガチャンガチャンとお椀やレンゲがけたたましく鳴り、破れるのではと心配になる。つーかよー、もちっと丁寧に扱えよな。こっちは客だぞおい。

リンダさん、間違えて、左隣の二人組の急須をとったら、となりのおっさんが「おう!それはうちんだぞ!」みたいに怒鳴った。もちろん広東語だから、もっと怖い口調である。で、良く見たらそのどなったおっさんと思った人は、「おばはん」だった。髪が五分刈りだが胸は出てる。怖ええよー。

我々が注文し終わるころ、右の家族連れが退散、替わりに中年男女5-6人がどやどやと割り込んできた。入るなりまた、店のおっちゃんの食器投げだ。最後にどん!っとお湯入り急須を置いていった。その男女のうち女性二人が、配られた食器のお椀にお湯を注ぎ、その中に、配られた食器を順に通していく。お箸やレンゲもだ。こうして一応食器を全部洗わないと気が済まない客がほとんどらしい。洗うというか、単にすべての食器を湯通しするだけで、どっちかというと、汚れを全体にまんべんなくならしているようにも思える。
とにかく、客は、店の食器を信用していない。客も客なら、それを黙認する店も店だね。

ここは、典型的な広東料理の店だった。英語その他外国語ゼロのメニューを見て注文、もちろんリンダさんがいろいろ助言してくれるし、漢字だからだいたい分かる。
遅い昼食、しかも夜もご馳走をたんといただく予定なので、少なめに注文。まずは野菜とキノコの焼きそば。オカズは牛肉と野菜の胡椒炒め、それと通菜(通心菜、空心菜ともいう)の腐乳炒め。以上3品をリンダさんに頼んで注文してもらった。この最後の通菜は、広東料理の人気メニュー。メルボルンでも時々手に入り、中華レストランに行くとよく注文する。合わせ調味料としては、腐乳という腐った豆腐のごときものが定番である。リンダさんも「へえー、良く知ってるねえ」と驚いていた。伊達にメルボルンに20年住んでないぜ。

で、あんまり汚くて、写真は撮らなかったので、勘弁してください。でも味はどれも抜群だった。

左隣の「おっちゃん二人組と思ったら片方はおばちゃんだった」の二人は我々が注文を終わるころ去っていき、替わりにじいさん二人組が座った。この人たちの注文方法がすごい。我々のように、上品に手を上げて「エクスキューズミー!」とか言って店員呼ぶみたいな悠長なマネはしない。店のマスターと目が合った瞬間に、マスターをバッと指差し「何タラカンタラー」とすげえ大声で注文する。ここではこうでもしないとなかなか注文が通らないんだろうね。

赤柱、まだまだ居たいが、他にも行きたいところがあるので、ここらで退散。なるべく綺麗なトイレを使いたかったので、スタバ(かその類似店)に入り、アイスコーヒーなどを注文して、トイレに順番に行った。アイスコーヒーを飲みながら、街に戻るミニバスを待つ。あとで分かったが、日曜の午后となり、道路が渋滞しており、ミニバスがなかなか来なかった。ミニバスは全部で17人しか客が乗れず、立って乗ることができない。1台めは直前で席がふさがってしまい、乗れなかった。2台めが来るまで、さらに15分ぐらい待った。

街に帰る反対方向は渋滞しておらず、30分ほどで銅羅湾(Causeway Bay)に帰ってきた。ここで再びユニクロ、そごうデパートなどで買い物をする。私はひたすら待つ。香港ガールを眺めていると、そんなに飽きない。

その後、二階建てトラムで中環へ、電車の駅で三つ分をトラムで西に移動した。

トラムは、バスの半分ぐらいしか横幅がなく、窮屈だが、それが余計におもしろい。

前後のトラムとギリギリまで近づいて止まるし、反対方向のトラムとも距離がほとんどない。ヒョイッと隣に飛び移れそうである。

後ろ乗り前降りで、席は両脇に一列ずつしかない。一階と二階をつなぐ狭い階段も前後に二つあり、上下とも真ん中の通路に立っている人は、人が乗ってくるとどんどん前へ移動していく。すぐ降りる人と、まだ乗っている人は、どこかですれ違う。料金は降りる時に払うが、ここにもオクトパスの読み取り機がある。

中環に行き、やや山方向に歩くと、有名な長い長いエスカレーターがある。これを一番下から最後まで登った。

長いと言っても、全部つながっているのではなく、長さがまちまちなエスカレーターがいくつもつながっているのだ。エスカレーターは上りのみだが、平行して坂道や階段が走っている。もちろん体力が許すなら歩いて登っても構わない。

香港の複雑な山の斜面にハリネズミのように建てられた異様に細長い高層住宅群の間に、自然発生的にできたかのような狭い路地をジグザクしながらつないで作った一大登坂路だ。したがって、逆にその登坂路から見れば、まわりはのっぽビルが林立して、空も見えない。しかし、風景はいろいろで、汚いビルの裏側だったり、商店のウインドウだったり、あるいは、狭い空き地にちょっとベンチがあるだけの公園があったりする。途中、両脇に西洋人好みのおしゃれなカフェ、バーなどが並んでいるところもあり、白人どもがワインをすすったりしているのもイトオカシであった。そんな地帯にオーストラリアンカフェがあったりする。

終点は単なる山道の途中。バス停があるだけだ。唐突に終わっている。しかし一番下から30分近くかかったのではないか?あーおもしろかった。

ここでタクシーを拾い、ピークトラム乗り場へ、これからピークに登る。と思ったら、乗り場に人があふれていた。この日、週末のため、大陸中国からたくさんの観光客が香港に押し寄せている。そしてこのピークが大陸中国人に大人気のスポットになっているのだそうだ。どうやら乗るのに1時間以上かかりそうである。

ピーク行きは今日は諦めた。そこで、とりあえずホテルに戻って休憩し、今夜のレストランを決め、予約を入れてから出直すという算段となった。

最寄りの地下鉄駅まで歩いたのだが、リンダさーん。ジモティーなのに駅の場所が分からない!
挙句の果てに、いかにも外国人らしい女性に道を聞いたりしている。おーい。どっちが現地人だよー。
やがて、地下鉄のマークの標識を発見。それに沿って歩いたら、中環駅にたどり着いた。

ところで、その中環に行き着くまでの間に、たくさんの人が公園や、あるいは単なる歩道に座り込み、ピクニックのようなことをやっているのを見た。リンダさんによれば、その人たちは、大体がフィリピン人だそうで、週末、仕事が休みだと、みんなで集まるのだそうだ。お金がないので、路上や公園で集まって、飲んだり食べたりして楽しんでいるらしい。フィリピン人は大部分がメイドなどの下働きをしており、超低賃金で働いている。香港の社会ははっきりとクラスが分かれているのである。しかし、どのフィリピン人も楽しそうにしているのが印象的だった。

つづく

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