十階で十戒を十回述懐する

うそだろう?知ってたこれ?
私は恥ずかしながら,50を過ぎたこの歳まで知らなかった。

述懐。

これは「じゅっかい」と読む。これはいい。
ところが,十回,十階,十戒。これらは,いずれも「じっかい」と読むというのだ。

当たり前だろうと思う人もいるだろう。でも,私は「じゅっかい」が当たり前だと思っていた。
単に私がこのルールを忘れていただけなのかもしれない。しかし,まがりなりにも,小学校から高校3年まで,12年間も漢字を習ってきた。しかも高校の1,2年と,ものすごく厳しい現国の教師に当たって,毎週の漢字のテストに備え,暇さえあれば漢字の練習をしていた。漢字は人並み以上に得意と思っていたのに,非常にショックだった。

NHKのアナウンサーが「じっかい」と読むのは知っていた。日本の標準語イコールNHKのアナウンサーの話す日本語,ではない。放送には放送に適した言葉遣いがあり,ときには漢字の読み方も変える。NHKの場合は,可能な限り「十」に小さい「ゆ」を付けないで読むのがきまりのようだ。十回が「じっかい」ばかりでなく,十万人は「じいまんにん」と読んでいるように聞こえる。

しかし,今回問題にしているのは,NHKのこの読み替えとはちょっと違って,十のあとに撥音がくる場合のみである。したがって,十回,十階,十戒,さらには十課,十科,十干,十巻,十間,十貫,十刊,十冠,十缶,十館,十期,十機,十基,十斤,十金,十区,十句,十組,十訓,十系,十傑,十件,十歳,十作,十皿,十指,十誌,十氏,十者,十射,十尺,十書,十章,十勝,十升,十床,十省,十賞,十色,十寸,十戦,十銭,十速,十足,十束,十対,十体,十滴,十的,十点,十店,十等,十把,十派,十羽,十敗,十杯,十箱,十発,十班,十版,十犯,十藩,十匹,十品,十分(充分ではなく,10 minutes),十遍,十本,などなど,これらにもあてはまる。
まだまだ,あるかもしれないが,以上は,漢字変換機能でいずれも「じっxx」と入力して変換できたものがほとんどである。(ちなみに,いずれも「じゅっxx」と入力しても正しく変換できる。この辺,どちらが正しいなどという議論はせず,ユーザーの利便性を考えているのだろう)

なぜ,こんなことを言っているのかというと,
うちの娘は来年から3年ぶりに日本語の授業を受け始める。これは大学受験対策なのだが,小学校6年間,あまりに簡単すぎた日本語の授業に嫌気がさし,フランス語を取ると言い出し,Year7から3年間,日本語を中断していた。しかし,ここビクトリア州の大学入学資格であるVCEの試験で,外国語にはボーナスポイントが付くことから,娘は日本語とフランス語のダブルボーナスポイントを狙って,来年から日本語を再開することにしたのである。

で,現在,読み書きは幼稚園レベルの娘に,このクリスマスから新年の夏休みに,漢字の特訓を命じた。友人でYear9まで日本語を取っていた人に,Year9の日本語教科書を譲ってもらい,さらには公文の漢字ドリル小学1年生用,これに参考書として,「クレヨンしんちゃんのまんがかんじじてん」を付け,毎日自習させている。

その自習の過程で,あるとき,突然娘から質問がでた。
「ねえ,じゅっかいは,じゅっかいじゃなくて,じっかいなの?」
「え?なんのこっちゃ?」
「だからさあ,一階,二階,といって,10のところではじっかいって言うの?」
「ああ,そりゃNHKの言い方だろう?」
「ちがうよ,ここに書いてあるもん」

クレヨンしんちゃんのまんがかんじじてんを指し示した。

「ほんとかよ?どれどれ…」

見て驚いた。
十階の読みとして,「じっかい」が丸。「じゅっかい」はバツだと書いてある。
「この読み方はほかと違うので注意しましょう」という旨の注意書きまである。

「おいおい,日本語はいつからNHKに仕切られるようになったんだよ。」

そう思いつつ,Webで調べたら,NHKとは微妙に違うが,上記のように,「十」のあとに撥音が来る場合は,「じっ」と読むということが分かった。

ちなみに,国語辞典でも,「十戒」は「じっかい」の見出し語で出ている。いやー知らなかったなあ。
理由はなんだよ?言いにくいからか?私にとっては,全く言いにくくないけどね。
それに,言いにくいという理由で言い易い方が「正しい」,そして本来の読みが「誤り」というのもどういうものか?
それとも「じっかい」は元々正しい読み方なんだろうか?

逆の例もあるぞ。
新宿はあくまで「しんじゅく」だけど,私の回りではほとんどの人が「しんじく」と言っていると思う。
「しんじゅく」って読んだら,はっきり言って,田舎者である。
この例に則るなら,十戒については,「じっかい」と読むことは許容しても,読み仮名をふるならあくまで「じゅっかい」だと思うのだが,どんなもんだろう。

さて,能書きはともかくとして,十歳,おっと違った!「実際」にどちらで教えるべきか?

最初,私はどっちでもいいと思っていたのだが,クレヨンしんちゃんが,「じゅっかい」はバツだ!とはっきり言っているので,困ってしまった。
ということは,テストでは「じっかい」と書いておくのが無難なんだろう。と,これが私の答えだった。

しかし,ここで妻の的を射た横槍(ん?的を射るのは矢だよねえ?)が入った。

「この際,どっちが正しいかは問題ではない。受験日本語としてどう教えられているかが問題のはず!」

そうである。的を射ている。それも真っ星(ど真ん中)を射ている。

そこで,友だちから譲ってもらった日本語の教科書「Obento」に何と書いてあるか。調べてみた。

探すのにかなり苦労したが,「数の数え方」をまとめたページを発見。これだ!

一階=いっかい
二階=にかい
三階=さんがい(「かい」じゃなくって「がい」になってる。ここは細かい。)
四階=よんかい
五階=ごかい

といって,最後に

十階=じゅっかい

と書いてある!おー,奇跡の大逆転!

ということで,ビクトリア州で日本語を教えている先生方に聞いてみたい。
VCEでこの問題が出たら,「じゅっかい」が正解ですよね。では,「じっかい」と書いたらどうなりますか?減点ですか?

VCE日本語は,標準語と違いますが,この点どうお考えでしょうか?
教科書が間違っています?他の教科書はどうなっています?あなたなら,どちらで教えますか?

私は「じゅっかい」に一票!日本の標準に異議あり。逆転はないにせよ,せめて「じゅっかい」も丸にすべし!

「十階で十戒を十回述懐する」への1件のフィードバック

  1. 「じゅっかい」も「しんじく」も東京弁です。

    建立(こんりふ)
    建立(けんりつ)
    執念(しふねん)
    執権(しつけん)
    十年(じふねん)
    十件(じつけん)
    雑巾(ざふきん)
    雑菌(ざつきん)
    甲虫(かふちう)
    甲冑(かつちう)

    歴史的仮名遣いでは元来中国でp音だった部分がフまたはツになります。
    p入声の「フツ相通」と言います。
    十回を「じゅっかい」と読むのは執権を「しゅっけん」と読むのと同じようにおかしいのです。

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