日テレ,トライシーン放送できず

ラグビーW杯,日本対カナダを見た。日本は勝てなかったけど,価値ある引き分け。気迫のこもったプレーに,こちらの実況でも「サムライ」を連発していた。観衆も日本のプレーに最後まで声援していてくれたみたいである。

今日は,この話題から派生したことを書く。そのため,ラグビーの話から入っても,カテゴリは「遠くにありて思うもの」になっている。

日本の最後の反撃は,公式計時がすでに80分を超え,カナダがタッチに逃れたのに,主審がノーサイドとせず,もうワンプレーさせたところから始まった。このときの主審の判断がアヤになったわけだ。ラグビーはサッカーと違って,プレーが切れるまでは時間切れになっても試合は終らない。プレー続行後,まず一度カナダがオフサイドかなにかで反則。日本はチョン蹴りで続行。プレーが切れても反則の場合,その反則がなければプレーが続いていたはずということで,プレーを続行させるわけだ。

そして短いパントがインゴールに上がり,これをカナダの選手がボールを手ではたいてエンドラインから出したということで,再び反則となり,試合続行。次の一連のプレーから日本が右隅に飛びこんでトライ。そしてコンバートが決まって,7点差を埋めた。この時点で時計は88分ぐらいまで行っていた。

私はここまで勿論,全部見ていた。実はちょっと起きるのが遅れたが,ハードディスク付きレコーダーで録画していたので,20分遅れぐらいで追っかけ再生して見た。(本当にこの機能は便利ですなあ!)

ところが,日本では,この最後のトライがきちんと放送されなかったんだと!

日本テレビは,私と同様,生中継ではなく,約10分遅れぐらいの追っかけ再生,つまり「擬似生」中継で放送していたそうである。ところが,80分過ぎても試合が終らなかった。日テレは,数分の延長を見て,「これは時間枠に入りきらない!」と判断。そこで急遽「本当の生」放送に切り替えた。「擬似生」から「本生」って,ちょっと変な連想をしてしまう私は本物のスケベ…いやいや話がそれた。えーっとそうそう,で,「本生」にしたら,すでに最後のトライが終っていて,いきなりその後のコンバートキックのシーンになってしまったというわけ。日テレでは,あわてて最後のエンディングテーマにトライシーンを織り交ぜたが,後の祭り。こんな大事なシーンをおっこどすなんてドジ!スポーツ中継は,筋書きのないドラマなんだ。最後の最後にどんな感動シーンが待っているか分らない。それなのに余裕をもって時間枠を設定しなかったあんたは有罪!約1000件のお叱りの電話やメールが殺到したってさ。あたりまえだよ。

そういうのを,同じくラグビー中継で昔も経験したな。あれは慶應が関東ラグビー対抗戦グループで全勝優勝した年だから,1984年?11月初旬の対明治戦。3点明治がリードで,インジャリータイムに突入。慶應はペナルティーを得た。思わず「あー,しょうがない,同点でいいや同点で!」と叫んだのを覚えている。ところが松永主将(昨年度まで慶應の監督をやってた),あくまで勝ちを狙ったのか?ペナルティーキックを取らず,プレーを続行。そのころからすでに中継担当のテレビ東京は「えー,誠に申し訳ありませんが,番組はまもなく終了します。」と逃げの態勢に入っていた。慶應怒涛の突進もゴールラインに届かず。番組は無情にも時間切れ直前,プチっと切れて,コマーシャルに。そして,エンディングテーマが流れ出すと,そこに映っていたのは1点差で慶應リードのスコアボード(当時トライは4点だった)。そしていつのものだかわからないトライシーンがちらりと映った。え?え?なんだったんだ今のは?翌日まで明治が勝ったと信じていた人がたくさんいたらしい。

で,どうしてこういうことが起きるのか?オーストラリアじゃありえないぜ。

ニッポンタロウ:「だってさ,もし放送を延長したら,次の番組との間のコマーシャルが放送できなくなる。そうするとそのスポンサーが怒るだろう!?」
オジーマイト:「ノーウォリイズ!オーストラリアでは,スポンサーは番組だけに付くんだよ。番組と番組の間には,スポンサーがいない。だから,その放送局の別番組のコマーシャルが挟まるだけ。日本もそうすればいいのに!」
ニッポンタロウ:「そういう手があるか。でも,だとしたら次の番組の開始が遅れるじゃないか!もっと悪いぞ」
オジーマイト:「ノーウォリイズ!」
ニッポンタロウ:「なんでノーウォリイズなんだよ?」
オジーマイト:「だって,何か問題ある?」
ニッポンタロウ:「おおありだろう。番組開始が遅れるんだよ。」
オジーマイト:「いいじゃん,そんなの」
ニッポンタロウ:「よかぁねえだろう。番組ってのは時報とともに,ピタっと始めるもんだ。」
オジーマイト:「ヂホー?なんだそりゃ?」
ニッポンタロウ:「時報は時報だろう。」
オジーマイト:「だからそれ,何?」
ニッポンタロウ:「時報だよ,毎時ピッピッピッピーって鳴るやつ。」
オジーマイト:「知らんな,そういう鳥は」
ニッポンタロウ:「ええー!あきれた。じゃあ,どうやって番組の時間を合わせるんだ」
オジーマイト:「だって,別に番組飛ばしちゃうわけじゃないよ。ちゃんと順番にやってるよ。」
ニッポンタロウ:「そういうことを言ってるんじゃないだろう。時間が遅れることをどう思ってるんだ。」
オジーマイト:「遅れてないよ」
ニッポンタロウ:「現に遅れてるじゃないか」
オジーマイト:「ああ,まあそれは数分はねえ」
ニッポンタロウ:「数分はねえ?数分もだろう!」
オジーマイト:「いいじゃん,数分ぐらい」
ニッポンタロウ:「あー,頭がいたくなってきた…よし,じゃあそれは置いとくとして,そういうふうにしていったら,積もり積もって最後にすごい遅れが出たりしないか」
オジーマイト:「でるかもね。でもそれは前の番組の奴らが悪いんで,仕方ないだろ。俺がいくら努力したって遅れは取り戻せないもの。」
ニッポンタロウ:「じゃあ,一日の終わりには,10分以上遅れちゃうぞ」
オジーマイト:「いつもそうだ,マイト。」
ニッポンタロウ:「そ,そうなの?」
オジーマイト:「イエーィ,マイト」
ニッポンタロウ:「そんなことでどうするんだー!」
オジーマイト:「ノーウォリイズマイト!」

日本からオーストラリアに来た人が,たまげることの一つに,オーストラリアの番組が,定時ピッタリに始まらないというのがある。ラジオの一部を除き,時報もない。朝の番組はさすがに各局とも大体時間どおりだ。しかし,別に秒単位で合っているわけではなく,あくまで大体なのだ。2-3分のずれは特に問題としない。そして,押せ押せで番組がずれていき,夜にはすごいずれになっていたりする。特にチャンネル10は凄まじく,夜10時ごろには大体10-20分ぐらい番組が遅れて始まるのは日常茶飯事となっている。どこでつじつまを合わせるのか,翌朝にはまた追いついているんだけどね。
最初にオジーマイトが言ったとおり,番組と番組の間にコマーシャルは無いので,しわ寄せでつぶされるコマーシャルがあるわけではない。しかしその反面,合間が少ない分,時間調整もできない。遅れたら,遅れたっぱなしで進行する。

考えてみれば,たかがテレビ。電車の遅れに比べれば罪は軽い。ちなみに朝のモーニングショーには時計が出るし,これはさすがにピッタリ合っているから,朝の忙しい時間に不便はない。ただ,ニュース読みが始まったからといって「あ,今7時ちょうどか」とか思い込むと大変なことになるので,注意だ。もっとも,よく考えれば,別に数分遅れたからって,遅刻ということは少ない。電車,バス,トラム,どれも時間どおりに来るわけないし,学校,工場みたいなものは知らないけど,勤務時間を分単位で管理している会社なんかない。そうそう,時報がないのと同じで,始業,終業時間にベルやチャイムがなる会社もない。日本ではそうだったと前に話したら,「学校じゃあるまいし」とみんなにあきれられた。

これを不便と感じるか,気にしないかで,日本人度,オジー度が分る。大体,日本人は細かすぎるのである。そりゃ時間どおりに物事が運ぶのは気持ちのいいものだ。だけど,その細かさには限度がある。数分の遅れを許すのと許さないのでは,それを達成するための努力にものすごい違いが出てくる。そこまでして達成するべき重要なものなのか?これはケースバイケースで判断すべきだろう。もし,そんな努力に値しないものなら,別のこと,もっと大事なことに力を注ぐべきではないのか。

そして,「時間どおりに物事が進んで気持ちいい」という自己満足のために,犠牲になるものもあることを覚えておいた方がいい。今回のトライシーンがその一つ。このシーンを見ずして,この試合を80分間追ってきた意味は無い。

まあ,これも言ってしまえば,たかがラグビーである。でも時間に追われて,人命が損なわれたこともあったはず。JR福知山線の事故は,そういう事故だったはずだ。
時間より,もっと大事なことはたくさんあるのだ。

 

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